雪夜のロンド
蒼く煌く星の神、楽園にて想う
蒼煌神(そうこうしん)、などと呼ばれたのはもはや一体いつの話からだったか。
それはもう、思い出す必要のない話であろう。
ユーリヤは今日も呼応するかのように瞬く星々をその宵の目に映して思う。
ユーリヤがいた世界、ラグナテラスではセイクリッドと呼ばれる神在りて。
ユーリヤはそのセイクリッドの中でも最高神にまで上りつめたのだ。
──元々は人間だった彼が、だ。
我ながら無茶をするものだ、とユーリヤは心の中で苦い笑みを浮かぶ。
『──、その名前はもう捨てるんだ。君は今から……そう、ユーリヤだ』
その脳裏に思い起こされる今はもう遥か遠い記憶の刹那。
刹那と、悠久。そのどちらも実は変わりのないものだと言ったのはユーリヤだったか。
刹那を、悠久に繰り返した。悠久を、刹那に繰り返した。
人間には十分長すぎる時間を、ユーリヤは過ごしてきていて。
もし、叶うことならば。
普通の人間で、普通の家庭で、普通の人生を送りたい。
なんて、昔の自分は考えていただろうと。
もし、叶うことならば。
誰も泣かない世界にしたい、だなんて願いは、それよりもっと前に感じられる。
ユーリヤには、きっと、知り得ないことなのだろうけれど。
時間は巡る、巡る。星が瞬き、月が落ち、人は言葉を交わすのだ。
今の自分だったなら。
人の普通を、叶えてみせよう。この手で。
今の自分だったなら──。
「……いいや、そんな過ぎた話のことはやめよう」
ユーリヤは立ち上がる。もうすぐシュネルも起きてくる頃なのだろう。
今くらいはそんなことを考えなくていいのかもしれない。
大体、使命だとか世界だとか、人間だった彼には重すぎた話なのだ。
少しくらい肩の荷から外してもいいのだろうと。
「朝ごはん、何がいいかなぁ。シュネルちゃんは」
今はただ、「何でもない人」を謳歌していてもいいのかもしれない。
ユーリヤがそう思うのは、いつも瞬く星のせいなのだろうか。
それとも、笑う黄昏のせいか、不愛想な泉か、優しい月のせいか。
時間は巡る、巡る。星が瞬き、月が落ち、人は言葉を交わすのだ。
時間も変われば人も変わるのだ。
蒼く煌く星の神、楽園にて想う。
今この時を生きるのだと、過去の自分に言い聞かせた。